オーバーラッピングとは?効果と具体的なやり方を解説
英語学習のプロの意見 : 3
「独学でできるスピーキングの伸ばし方を知りたい」「ネイティブの英語をスムーズに聞き取れるようになりたい」と希望する人におすすめなのが、オーバーラッピングです。
初心者にもできるオーバーラッピングの具体的なやり方を紹介します。ほかの学習法との違いを詳しく知りたい人に向け、オーバーラッピングならではの特長や得られる効果も紹介します。
加えて、スムーズに学習に取り組めるよう、おすすめの教材と無料アプリをまとめました。ぜひ参考にしてください。
この記事に登場する英語学習のプロ
早川幸治(Jay)
ニックネームはJay。SEから英会話講師へ転身。その後、英語セミナー講師として、これまで全国200社以上で研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。高校2年で英検®︎4級不合格から英語学習をスタート。苦手を克服し、TOEIC®︎990点(満点)、英検®︎1級取得。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、「上達の本質」を英語学習ほか目標設定やプレゼンなど幅広い研修に応用している。著書に「TOEIC®︎ L&Rテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「はじめてでも600点ごえ!TOEIC®︎テスト 全パート完全対策」(永岡書店)、など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティングやコーチング、「英語思考で身につける!日本語プレゼンセミナー」も担当。株式会社ラーニングコネクションズ代表取締役。
Shin
TOEIC®︎985、英検®︎1級、TOEFL®︎108。純日本人ながら、大人になってからの日本における自学自習で英語力を磨く。その後、大学受験予備校講師、英検®︎講師、TOEIC®︎講師、TOEFL®︎講師等、英語に関するあらゆる試験を指導する講師職に就く。
Hiro
アメリカの大学でピアノを専攻。音楽よりも英語に魅了され、帰国後は英会話・塾(英語・現国・古典)の講師、外国人秘書、外国人経営者補佐として働く。現在はカナダで牧師の妻として奉仕をしながら、フリーランスの翻訳家、ライターとして活動中。大学生と高校生、セントバーナードの愛犬ハチの3児の母としても奮闘中。
オーバーラッピングとは?
オーバーラッピング(overlapping)とは、お手本の音声と同時にスクリプトを読み上げるトレーニング法です。目でスクリプトを追いながら、耳で音声を聴き取り、瞬時に発声します。
リーディング、スピーキング、リスニングを同時に鍛えられるため、注目を集めている学習法のひとつです。
オーバーラッピングに必要なのは音声付きのスクリプトのみです。音声を聞けて声も出せる場所であれば、どこでも1人で学習できます。
独学に適しており、気軽に学習を始めやすいのが魅力です。
オーバーラッピングとシャドーイング・音読との違い
オーバーラッピングに似た学習法に、シャドーイングと音読があります。オーバーラッピング・音読との違いを詳しく解説します。
「オーバーラッピングとシャドーイング、どちらが自分に合っているのかわからない」とお悩みの人はぜひ参考にしてください。音読にチャレンジして、効果を実感できずに挫折した経験がある人もお役立てください。
シャドーイングとの違い
シャドーイングは、聞こえてきた音声を追いかけて発声するトレーニングです。
厳密には、音声の0.5〜1秒後、または1〜2単語後にお手本を真似て発声します。スクリプトを読まないため、聞こえてきた音声だけが頼りです。
オーバーラッピングはスクリプトを読みながら、音声と同時に発声します。
シャドーイングはスクリプトを読まないため、初心者はハードルが高く感じるかもしれません。十分なリスニング力がないうちは、意味が理解できていないまま、音を真似るだけになってしまいがちです。
初心者には、シャドーイングのほうが難易度は高いかもしれません。まずはオーバーラッピングで基礎力を鍛えてから、シャドーイングに挑戦するのがおすすめです。
音読との違い
音読はスクリプトを声に出して読む練習法です。英文の意味や文脈の流れ、文章の切れ目を意識しながら発声トレーニングを重ねます。
黙読では無意識に読み飛ばしていた単語もすべて口に出すため、自然に語彙力を鍛えられるのが魅力です。
お手本の音声を用意するかは、学習者次第です。
お手本の音声がない場合、間違った発音で練習を続けてしまうことも考えられます。すでに正しい発音が身に付いている人なら、音読練習を繰り返すことで会話の瞬発力や流暢さを磨けるでしょう。
発音に自信がない人は、お手本の音声を聞けるシャドーイングやオーバーラッピングから始めるのがおすすめです。
オーバーラッピングのやり方
オーバーラッピングの具体的なやり方を紹介します。
初心者でも真似しやすいよう、5つのステップに分解して解説します。オーバーラッピングに興味はあるものの、効果的な学習法がわからない人はぜひ参考にしてください。
教材(英語の音声付きスクリプト)を準備する
音声付きのスクリプトを用意します。
大切なのは、自分のレベルに合った教材を選ぶことです。初心者は短い文章から成るスクリプトを選びましょう。
音声付きのスクリプトであれば、インターネットで探せる記事やYouTube動画でも構いません。
YouTubeで「オーバーラッピング 英語」と検索すると、トレーニングに活用できる、さまざまな動画が見つかります。自分のレベルに合った動画も見つけやすいでしょう。
学習に慣れないうちは、本やアプリの活用もおすすめです。教材やアプリでの学習が気になる人に向け、後半でおすすめの教材とアプリを紹介しています。ぜひ読み進めてください。
スクリプトを黙読する
教材のスクリプトを黙読します。知らない単語や発音がわからない単語は、この時に調べておきましょう。
オーバーラッピングでは、お手本の音声と同時に発声します。スクリプトに馴染みのない単語がいくつもあると音声についていけず、効果的な練習が期待できません。
わからない単語は黙読の際にチェックを付けます。一通り読み終えたら必ず意味や発音を調べて、再度読み返しましょう。3回ほど繰り返して黙読をし、疑問のない状態にしておくのがポイントです。
オーバーラッピングをする
早川幸治(Jay)
スクリプトを読みながら、聞こえてきた音声と同時に発声します。単に読むのではなく、スクリプトの意味を理解しながら練習するのが大切です。
意味を理解していないと、学習した内容が記憶に定着しにくくなります。カラオケを練習する際、歌詞の意味を理解してから練習したほうが早く覚えられるのと同じ原理です。
意味を理解したら、仕事や日常生活で使うシチュエーションもイメージしながら練習してみましょう。
聞き取れない箇所を特定する
聞き取れなかった単語や、スピードが追いつかなかった箇所があれば音声を聞き直します。
初心者は、スマートフォンの録音機能を活用し、声を録音するのがおすすめです。録音を聞き返し、お手本の音声とずれている部分を確認してください。
うまく発声できなかった箇所は、スクリプトにマークを付けておきましょう。
単語をうまく発音できなかったのか、息継ぎがうまくできなかったのかなど、原因を振り返るのが大切です。ひとつずつ改善点をチェックすると上達が早まります。
難しい箇所をリピーティングする
上手く発音できなかった単語や、文章全体をスムーズに言えなかった箇所をリピーティングします。リピーティングとは、音声の後に真似して発声することです。
初心者はスクリプト全体を一度に聞くのではなく、文章ごとにリピーティングするトレーニングから始めてみてください。
何度か練習し、リピーティングでスムーズに発話できるようになったらオーバーラッピングに挑戦してみましょう。
最初はお手本の音声についていけない人も多くいます。しかし、最初から完璧を求める必要はありません。自分のレベルに合わせ、徐々にトレーニングの難易度を上げていくのが挫折しないコツです。
オーバーラッピングの4つの効果
オーバーラッピングの4つの具体的な効果を解説します。オーバーラッピングに興味はあるものの、具体的な効果がわからずこれまで挑戦できなかった人は、ぜひ参考にしてください。
英語の自然なリズム・イントネーションを習得できる
Shin
オーバーラッピングを続けると、英語特有のリズムやイントネーションを習得できます。
最初は、お手本の音声に追い付くことで精一杯かもしれません。慣れてくると発音のみでなく、自然なリズムとイントネーションが会得できます。
オーバーラッピングは、シャドーイングに挑戦する前のトレーニングとしてもおすすめです。シャドーイングは同時通訳者向けのトレーニングとして知られています。
聞こえてきた英文を記憶し、即時に再現するスキルが求められるため、初心者はハードルが高いと感じるかもしれません。
その点、オーバーラッピングはスクリプトがあるため、すべてを記憶する必要がありません。
オーバーラッピングでお手本の音声と同じように発声できるようになったら、スクリプトなしのシャドーイングにもチャレンジしてみましょう。
語彙力を鍛えられる
語彙力の向上が期待できます。
お手本の音声に合わせて発話するためには、発音や意味がわからない単語を事前に調べておく必要があるからです。
トレーニングを重ねると自然に新しい単語を覚えられるだけでなく、フレーズの中でどのように単語が使われているのかもわかるようになります。
文法に苦手意識がある場合でも、オーバーラッピングでさまざまな英文に触れることにより、自然に文法を覚えられるでしょう。
ネイティブの速度でも聞けるリスニング力がつく
オーバーラッピングを繰り返し練習すると、ネイティブの発音や自然なリズムに慣れ、正確に聞き取れるようになります。
多くの人がネイティブの言っていることを聞き取れないのは、相手の話すスピードが早いからです。
すべての音を正確に聞き取れません。文字を読めば理解できるのに、会話だと理解が追い付かない人もいるでしょう。
オーバーラッピングを継続することで、聞こえてきた音声を素早く理解する力が向上します。情報を処理する力も鍛えられ、日本語に変換しなくても英語のまま理解できるようになるでしょう。
英文をスラスラ読めるようになる
オーバーラッピングではスクリプトを繰り返し読むため、速読力を鍛えられます。
単に読むだけでなく、内容を理解しながら読む力が向上します。日本語に訳しながら英文を前後に行き来して読んだり、返り読みをしたりする必要はありません。
英語のまま内容を理解できるようになります。結果として、読むスピードが格段に早くなるのです。継続するとわからない単語があっても、前後の文脈から意味を推測できるようになります。
オーバーラッピングの注意点
オーバーラッピングの注意点を解説します。効果を最大限にするために、注意点を押さえてトレーニングをしましょう。
お手本の音声を忠実に真似る
オーバーラッピングでは、お手本の音声を忠実に真似るのが大切です。下記のポイントも真似するよう意識してください。
- 発音
- アクセント
- 抑揚
- 音声変化
- 息継ぎのタイミング
4つのポイントを意識しながら練習すると、ネイティブに近い自然な英語の習得が期待できます。音声を細かく聞き取るためにも、集中できる環境でトレーニングをしてください。
発音に自信がない人は、ぜひ以下の記事を参考にして基本ルールを学んでください。
関連記事:英語の発音を良くするには?基本の発音ルールとトレーニング方法
反復練習をする(最低10回)
トレーニングをする際、同じスクリプトを最低10回繰り返し練習してください。
最初は口が追いつかず、スムーズに発声できないかもしれません。
10回繰り返してもスムーズに言えないスクリプトもあるでしょう。しかし、焦る必要はありません。うまく発声できなかった箇所を重点的に繰り返し、スムーズに言えるまで反復練習をしてください。
スクリプトによっては、内容が簡単に感じることがあるかもしれません。練習を重ねずスムーズに言えるようになっても、オーバーラッピングを繰り返します。最低10回はトレーニングすることで、英語特有の発音やリズムに慣れ、記憶の定着率が高まります。
オーバーラッピングにおすすめの英語教材3選
オーバーラッピングにおすすめの、音声付き教材を3つ紹介します。初心者で独学が不安な人や、教材を使うことで学習が捗る人はぜひ参考にしてください。
15時間で速習 英語耳 頻出1660語を含む英文+図で英会話の8割が聞き取れる
「15時間で速習 英語耳 頻出1660語を含む英文+図で英会話の8割が聞き取れる」は、1日2分×3回、計15時間のトレーニングを通して、英語耳を鍛えられる教材です。
ビッグデータに基づき割り出された日常会話の8割を占める必須英単語、1660語が収録されています。
お手本の音声は、ネイティブが話すスピードのままです。英語学習者向けにスピードを調整されていないため、実践力を鍛えられるのが特長です。
CDおよびパソコンで再生できるmp3データが付いています。発音の解説や英文にはイラストが付いているため、初心者でも理解しやすいでしょう。
15時間で速習 英語耳 頻出1660語を含む英文+図で英会話の8割が聞き取れる
【音声DL付】ネイティブが毎日使ってる 万能英会話フレーズ101
「【音声DL付】ネイティブが毎日使ってる 万能英会話フレーズ101」は、YouTube登録者数が50万人を超えている「Hapa英会話」のJun先生が監修した教材です。
収録されているのは、ネイティブが使う万能英会話フレーズ101個です。日本人学習者が使いこなせていないフレーズ(Phrasal Verbs)を日米バイリンガルの著者が選び、ネイティブ感覚で覚えられるように紹介されています。
日常会話からビジネスまで、どのような場面でも使えるのが特長です。各例文に解説が付いているため、フレーズの使い方を理解しながら学習できます。
音声データはパソコンやスマートフォンからダウンロードができます。
【音声DL付】ネイティブが毎日使ってる 万能英会話フレーズ101
すごい英語音読 30日でネイティブとスラスラ話せるようになる
「すごい英語音読 30日でネイティブとスラスラ話せるようになる」は、通訳者兼英語講師である著者が、スピーキングの上達に効果的なトレーニングをまとめた1冊です。
1日10分計30日で、ネイティブと会話をできるスピーキング力およびリスニング力を習得できます。おもなトレーニングは下記の3つのステップです。
- 【STEP1】発音が劇的にキレイになる!「パーシャル音読」
- 【STEP2】英語が自然と口から溢れ出す!「パターン音読」
- 【STEP3】英語力が格段にアップする!「ストーリー音読」
CDおよびダウンロード形式の音声付きです。それぞれのページにあるQRコードから英文ごとの音声を聞くか、音声データをダウンロードできます。音声データは、一括ダウンロードも可能です。
すごい英語音読 30日でネイティブとスラスラ話せるようになる
オーバーラッピングにおすすめの無料英語アプリ3選
オーバーラッピングにおすすめの英語アプリ3選 を紹介します。すべて無料のため、オーバーラッピングが自分にあっているのか試してみたい人はぜひ参考にしてください。
リスニングドリル- 英語勉強 英語 リスニング 学習 アプリ
Hiro
「リスニングドリル - 英語勉強 英語 リスニング 学習 アプリ」は、リスニング学習のために開発されました。
日本語・英語字幕と音声も付いていることから、オーバーラッピングの練習にも有効です。
魅力のひとつは、コンテンツの幅広さです。TED Talks、Audio Books、童話からコンテンツを選べます。
音声の再生速度は調整可能です。オーバーラッピングに初めて挑戦する人も練習しやすいでしょう。
[特長]
音声調整機能、字幕、単語帳
[対応機種]
Learn American English Podcast
「Learning American English Podcast」は、アメリカの国営放送、ボイス・オブ・アメリカが英語学習者向けに開発したアプリです。
世界中の最新ニュースからアメリカの歴史・文化、科学やテクノロジーまで、幅広いテーマのコンテストが毎日更新されています。
音声を再生しながらスクリプトを表示すると、読み上げられている箇所が強調表示されます。音声の再生速度を調整できるだけでなく、自動繰り返し機能も付いているのが魅力です。
[特長]
再生速度調整機能、自動繰り返し機能、背景色・テキストの色・テキストサイズ調整機能
[対応機種]
「English News in Levels」
「English News in Levels」は、世界中のニュース記事を通じて英語を学べるアプリです。特長は、3つのレベル別に、同じニュースがリライトされている点です。
「レベル1」は初心者でも理解できる単語で文章が構成されています。世界情勢と英語を同時に学びたい人にもおすすめです。翻訳ページで意味を確かめられ、内容を理解しながら学習ができます。理解度をチェックできるテスト付きです。
[特長]
3つのレベル別のニュース記事、音声調整機能、翻訳機能
[対応機種]
オーバーラッピングで総合的な英語力を鍛えたいなら「スピークバディ」
オーバーラッピングは、目・耳・口を使いながら、英語力を鍛えるトレーニング法です。効率的にリーディング、リスニング、スピーキングを同時に鍛えられます。
音が気にならない場所さえ確保できれば、1人で好きな時に練習できるのが魅力です。
最初は難しく感じるかもしれません。その場合は教材やアプリを活用してみてください。自分のレベルに合った教材・アプリを選べばスムーズに学習できるでしょう。
アプリを使ってリスニングやスピーキングの練習をして実践的な英会話力を身に着けたい人は、ぜひ「スピークバディ」を活用してみてください。
「スピークバディ」は、AIキャラクターと話すことでスピーキングを実践的に鍛えられるAI英会話アプリです。レベルチェックテストや精度の高い発音チェック機能、AIキャラクターとのフリートーク機能など、無料アプリにはない有用な機能が揃っています。ユーザーそれぞれに合わせた学習カリキュラムが用意されているため、自分のレベルに合った教材・アプリがなかなか見つからない人も効果的な学習が可能です。
まずは無料お試し期間で「スピークバディ」を試してみてください。