英語の発音を独学で矯正する方法とは?おすすめアプリも紹介
英語学習のプロの意見 : 4
「英語の発音がネックになって、英語がなかなか通じない……」と悩んでいる方や、逆に「英語の発音の違いがなかなか聞き取れない……」と困っている方は多いと思います。
ネイティブのような発音にあこがれて、ご自身のカタカナ英語にコンプレックスを抱いている方もいるかもしれませんね。
そして、お金を節約するために、発音矯正スクールに通わずに、独学で発音を矯正したいと考えている方も多いでしょう。
この記事では、英語の発音を独学で矯正する方法を解説します。
発音矯正に役立つアプリも紹介するので、英語の発音に悩みを抱えている人はぜひ参考にしてください。
この記事に登場する英語学習のプロ
竹村 和浩
ビジネス・ブレークスルー大学経営学部准教授、株式会社ユニバーサル・エデュケーション 代表取締役。英検®1級・英語通訳案内士。英語発音矯正士。英語発音矯正の専門家であり、この分野の第一人者。独自の英語音声指導法:EVT: English Voice Train、ing ,英語生成教則:GEM: Generative English Methodを開発。日本にいながらにしてグローバルに活躍できるグローバル人材育成の専門家。日本人がグローバルに活躍するために必要な、英会話の基礎としての英語発音トレーニング、ディベート、ロジカルシンキング、欧米型交渉術、日本文化を理論的に学ぶ「日本学」を専門としている。
上田 哲也
大学時代のバンクーバー留学(1年間)をきっかけに英語学習を開始。新卒で鉄鋼商社に入社し、財務部を経て海外営業で約4年間にわたりアジアや欧米のマーケットを担当。2020年にフリーランスの英語講師として独立。企業研修や自治体の研修の講師、DMM英会話なんてuKnow?回答者、IELTS™専門学校 PlusOnePoint 講師などを務める。英検®1級・TOEIC®満点・国連英検特A級・IELTS™8.0を保有。著書『時短省力 私の英語勉強法』
Yukoコーチ
オーストラリア在住10年。日本とオーストラリアで介護・看護師の勤務経験あり。IELTS™7.5取得。現在はオーストラリアで販売員のアルバイト、英語コーチングをしつつ子育て中。勉強法や習慣化などの本を読むのが好きです。
Monicoコーチ
中学校の義務教育で英語に出会い虜になる。その後高校生で語学研修でオーストラリアに滞在、全然英語が話せなくて絶望する。外国語大学に進学し、ひたすら英語と向き合い続け、8か月の語学留学の後、ようやく英語に自信がつく。大人向け英会話学校で現役講師を務める傍ら、英語学習者向けのコラムなどライターとしても活動中。
独学で英語の発音矯正をする際の基礎知識
英語の発音を矯正したいと考えている方は、まず英語の音の仕組みを知っておきましょう。
英語の個々の音、発音ルール、リズム・ストレス・イントネーションについて知っておくと、英語の発音を効果的に学ぶことができます。
英語の音について
英語の発音を矯正しようとしている方は、まず、英語の個々の音を学ぶことをおすすめします。
英語は、日本語よりも圧倒的に音の多い言語です。
日本語の母音が「あ」「い」「う」「え」「お」の5つであるのに対し、英語の母音は15個以上もあるといわれています。
子音の数も、日本語が13個であるのに対し、英語は24個もあります。
そして、例えば日本語では同じ「あ」と認識される音でも、「hat /hæt/(帽子)」と「hut /hʌt/(小屋)」のように、1つの音の違いで意味の違いが生まれることもあるのです。
発音矯正を始める際は、まず、「日本語の音と英語の音は違う」ということを理解し、英語の個々の音を、フォニックスや発音記号などを通して学んでおくのがおすすめです。
英語の発音ルールについて
英語の発音を矯正しようとしている方は、音声変化という英語の発音ルールを理解しておく必要もあります。
ネイティブの英語音声を聞く時、スクリプト(書き下し文)を目で追っていたら、いつの間にか音声についていけなくなっていたことはありませんか?
この現象は、英語の音声変化を把握していないことが1つの原因となっています。
例えば、「Look at this picture.」という文では、「Look」の語末の「k」と「at」の「a」はくっついて発音されます。
この現象は「リンキング(連結)」といい、英語の文を発音する際によく起こる音声変化の1つです。
音声変化には、ほかにも「同化」「ら行化」「脱落」「弱形」などがあり、これらのルールを把握していないと、英語がうまく発音できなかったり、英語が聞き取れない原因となってしまいます。
ストレス・イントネーション・リズムについて
英語の発音を学ぶ際は、英語の個々の音と音声変化だけでなく、ストレス・イントネーション・リズムにも気を配りましょう。
ストレス(強勢)は、単語のどの部分を強く、長く読むかです。
例えば、「object」という単語は、「OB・ject」といった感じに、最初の音節を強く読むと、「物体」という意味になります。その一方で、「ob・JECT」という感じに、2番目の音節を強く読むと、「反対する」という意味になってしまいます。
このように、ストレスの位置によって、単語の意味が変わってしまうこともあるのです。
イントネーション(抑揚)は、英語の文を上がり調子に読むか下がり調子に読むかです。
例えば、「Excuse me. ↓」と下がり調子に発音すると、「すみません」という意味になるのですが、「Excuse me?↑」と上がり調子に発音すると、「何と言ったんですか?(もう一度言ってください)」というニュアンスになります。
また英語における「リズム」とは、英文のうちどこを強く長く読むかということなのですが、リズムによっても、文全体の意味や相手に与える印象が変わってしまいます。
英語の発音においては、ストレス・イントネーション・リズムの要素も決して無視できないのです。
独学で英語の発音を矯正する方法
それでは、独学で英語の発音を矯正する手順を見ていきましょう。英語の発音を身につけるには、手順を間違えないことが重要です。
- フォニックスで英語の個々の音を学ぶ
- 単語単位で発音できるように練習する
- オーバーラッピングやシャドーイングで文単位の発音を練習する
- 英会話で実践する
それぞれの手順について、具体的にどうすればいいのか見ていきましょう。
1. フォニックスで英語の個々の音を学ぶ
前の章で触れたように、独学で英語の発音を矯正するには、まず、英語の個々の音を学び、身につける必要があります。
英語の個々の音をマスターするのにおすすめの方法が「フォニックス」です。
フォニックスとは、英語の文字と発音を結び付けるための学習法で、もともとは英語圏の子どもたちに読み書きを教えるために開発されたメソッドです。
「A=/æ/」、「B=/b/」、「C=/k/」……というように、英語の文字を見た時に、どう発音すればいいかを把握できます。
ただ、フォニックスだけでは英語のすべての音を網羅することはできないので、発音記号も読めるようにしておくとよいでしょう。
以下のプロの意見も参考にしてください。
竹村 和浩
小学校の英語の授業では発音記号を扱わないとのことですが、大人が英語学習をする場合は、ぜひ学んでおきたい知識ということですね。
英語を「一生モノ」にしたい学習者の方は、少々遠回りに感じても、フォニックスと併せて発音記号を学んでおきましょう。
2. 単語単位で発音できるように練習する
英語の個々の音をだいたい学び終えたら、今度は単語単位で発音できるようトレーニングしましょう。
単語単位の発音を学習する時は、お手本となるネイティブの音声を聞き、真似して発音する方法がおすすめです。
後の章で紹介しますが、単語単位の発音練習には、発音認識AI搭載のアプリが活躍します。
発音矯正アプリは、ユーザーの発話を音素単位で認識し、どのように発音すればいいかフィードバックを与えてくれるので、非常に効果的な学習ツールといえます。
3.オーバーラッピングやシャドーイングで文単位の発音を練習する
個々の単語を上手に発音できるようになったら、文単位でリズムやイントネーションを正しく発音できるよう、英語の生の音声を使ってシャドーイングするのがおすすめです。
シャドーイングとは、お手本となる英語の音声をシャドー(影)のように追いかけて発声するトレーニング法で、スクリプト(書き下し文)は見ないで行います。
ただ、シャドーイングは、難易度の高い、上級者向けのトレーニング法なので、難しくてついていけないと感じる方も多いかもしれません。
シャドーイングが難しすぎると感じる方は、英語音声のスクリプトを手に入れて、スクリプトを見ながらオーバーラッピングを行うとよいでしょう。
オーバーラッピングでは、スクリプトを見ながらお手本の音声と同時に発声するので、自分の発音がどのようにネイティブとズレているかが分かります。
以下のプロのアドバイスも参考にしてください。
上田 哲也
シャドーイングや音読を重ねることで、徐々にイントネーションが身につくとのことですね。
オーバーラッピングも難しいという方は、ネイティブのお手本を聞いた後に音読するトレーニングから始めるのもおすすめです。
ちなみに、文単位の発音練習に対応している発音矯正アプリもあるので、アプリを利用してトレーニングするのもよいでしょう。
4.英会話で実践する
シャドーイングやオーバーラッピングで英語の大まかな発音を身につけたら、自分の発音が本当にネイティブに通用するか、ネイティブ相手に壁打ち相手になってもらうとよいでしょう。
独学であれば、海外の方が集まるバーに足を運んでもよいですし、ミートアップイベントに参加するのもおすすめです。
「Hello Talk」など無料の言語交換アプリを利用するのもよいでしょう。
英語の正しい発音、特にリズムやイントネーションは、実践を通して磨くのが一番です。
英語の発音トレーニングに役立つアプリ6選(無料あり)
ここでは、独学で英語の発音矯正を行う際に役立つアプリを6つ紹介します。
- AI英会話 スピークバディ
- ELSA Speak
- レシピー
- スピーク
- スタディサプリENGLISH
- 発音博士
無料で利用できるアプリもあります。それぞれどんなアプリか見ていきましょう。
AI英会話スピークバディ
AI英会話 スピークバディは、AI相手のリアルな英会話に定評のある英会話アプリです。
AIがそれぞれの学習者の英語力に合わせたカリキュラムを提案してくれ、発音に特化した特別トレーニングも用意されています。
例えば特別トレーニング「発音コーチング」では、過去のデータからユーザーが苦手とする発音をピックアップして、集中的にトレーニングが行われます。
文単位のリズムやイントネーションをチェックする「コピーキャット」というレッスンもあり、楽しみながら英語の発音を学ぶことができます。
スピークバディに無料版はありませんが、3日間の無料体験期間が提供されており、お試し期間中はすべての機能が利用可能です。
ELSA Speak
ELSA Speakは、最先端AIを搭載した英会話アプリです。特に発音矯正機能に定評があります。
ELSA Speakの音声識別AIは、ユーザーの発音を音素単位で認識し、分析します。
そしてそれぞれの学習者が苦手とする音素を導き出し、最適なカリキュラムを作成してくれます。
単語の発音に加え、ストレス・リズム・イントネーションまですべての発音を練習できるため、発音矯正にぴったりのアプリです。
ELSA Speakには7日間のお試し期間が設けられており、お試し期間後も無料で一部の機能を利用することができます。
ただ、無料版では受講可能なレッスン数が限られてしまうので、本格的に発音矯正をしたい方は、有料版の利用がおすすめです。
レシピー
レシピーは、スマホを使ったスキマ時間の自習と、先生とのオンラインレッスンの組み合わせにより、単語・文法・英語4技能をすべてが鍛えられるオールインワンタイプの学習プラットフォームです。
そしてレシピーのスピーキングレッスンには、AIによる発音チェックが盛り込まれています。
発音チェックのレッスンでは、発音が100点満点で評価され、うまく発音できていない部分は色が変わって表示されます。
レシピーには15日間の無料トライアルが用意されており、お試し期間後も一部の機能を無料で利用することができます。
ただ、発音矯正機能を含むスピーキングレッスンは、無料での利用はできません。
スピーク
スピークは、アメリカシリコンバレー発のAI英会話アプリです。
スピークの音声認識AIは、ネイティブスピーカーだけでなく、日本人を含むノンネイティブの発音データまで、膨大な量を学習しており、非常に精度の高いものです。
発音の練習中に単語をタップすると、「発音コーチ機能」が起動します。
正しい音・間違っている音を指摘されるだけでなく、どのように発音すればよいのか、きめ細やかなフィードバックを得ることができます。
スピークに無料プランはありませんが、7日間の無料お試し期間が提供されています。
スタディサプリENGLISH
スタディサプリENGLISHの「日常英会話」と「ビジネス英語」では、2022年5月25日より「基礎発音講座」が提供されています。
基礎発音講座では、まず1回約5分の動画授業で、発音について学びます。
動画を視聴した後に、単語や文を実際に発音し、AIがその発音を認識・判定することで、習熟度を確認できます。
そして最終的に確認テストを行うことで、正しい発音の定着をはかります。
スタディサプリENGLISHでは、7日間のお試し期間が設けられています。また、お試し期間後も、一部の機能を無料で利用することが可能です。
ただ、無料で利用できるのは「L」と「R」の違いについてのレッスンのみなので、本格的に発音矯正をしたい方は、有料版の利用をおすすめします。
発音博士
発音博士は、多くの部分を無料で利用できる発音矯正アプリです。
一部の単語は有料ですが、「基本100英単語」「月・曜日・数の英単語」「惑星・衛生セット」など、無料で利用できる単語が多数用意されています。
「発音博士」では、ユーザーの発音を音素単位で分解し、ネイティブとどのように違うのか視覚化してくれます。
お手本と違う音は、タップすると1音ずつ再生できるので、納得できるまで何度でも発音の違いを分析することができます。
無料で発音矯正のトレーニングを行いたい人にぴったりのアプリです。
英語の発音矯正を独学で行うメリットとデメリット
ここまで、英語の発音矯正を独学で行う方法を解説してきました。
しかし、発音矯正を独学で行うのには、メリットと同時にデメリットもあります。
どういったメリット・デメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
発音矯正を独学で行うメリット
英語の発音矯正を独学で行うメリットは、お金がかからないことと、自分のペースで学習が進められることです。
費用面では、自分の予算に合わせてテキストを買ったり、アプリを利用したりすることができます。
また、スクールやコーチングなどを利用する場合、決まった時間に予約を取る必要がありますが、独学の場合、スキマ時間を有効活用しやすいというメリットもあります。
発音矯正を独学で行うデメリット
発音矯正を独学で行う場合のデメリットは、モチベーションを保つのが難しいことと、そして成果が出にくいことです。
目標を一緒に目指してくれる伴走者がいないので、学習をサボりがちになって、結局発音矯正を辞めてしまうというリスクがあります。
さらに、自分の発音に対してフィードバックをもらえることがないため、正しい発音を身につけるのが遅れてしまったり、正しい発音を身につける前に挫折してしまう危険もあります。
まとめ
独学で英語の発音を矯正するには、まずは英語の音について正しい知識を把握しておく必要があります。
その上で、以下のような手順を踏むと効果的です。
- フォニックスで英語の個々の音を学ぶ
- 単語単位で発音できるように練習する
- オーバーラッピングやシャドーイングで文単位の発音を練習する
- 英会話で実践する
ただし、独学での発音矯正には、挫折の危険も伴います。以下のプロの意見も参考にしてください。
Yukoコーチ
独学で発音矯正する方法もある一方、発音学習の性質上、スクールに行った方が成長は早く、成果も確実だということですね。
以下のようなアドバイスもあります。
Monicoコーチ
やはりMonicoコーチも、「独学で発音矯正することは不可能ではない」としつつも、フィードバックの重要性について強調しています。
また、質問者の方はネイティブの講師に教わることを前提としていたようですが、Monicoコーチによると、日本人コーチの方が発音矯正は得意であるとのことでした。
独学で発音矯正を行うことは可能というのが多くのプロの見解ですが、早く発音を身につけたい方や、確実に発音を身につけたい方は、プロの第三者の力を借りてみてはいかがでしょうか。
英語の発音矯正におすすめの英語コーチング比較7選!通じる・かっこいい発音を身につけたい
執筆者=なっつるん