英語が「嫌いすぎる」人へ|苦手意識を克服するコツとおすすめ勉強法
英語学習のプロの意見 : 2
中学時代・高校時代を通して、英語が苦手教科になっていて、英語のことが「嫌い」を通り越して、「嫌いすぎる」人も多いかと思います。
それにもかかわらず、仕事で英語が必要になったり、希望する職種の要件に「英語」が含まれていたりしたら、どうすればいいか分からなくなりますよね。
この記事では、英語が「嫌いすぎる」方が苦手意識を克服するコツと、英語嫌いの方におすすめしたい勉強法を紹介します。
英語への苦手意識を克服したい方はぜひ参考にしてください。
この記事に登場する英語学習のプロ
前川 未知雄
1978年石川県金沢市生まれ。星稜高校卒。大学在学中にスカッシュというスポーツに打ち込み、2度の海外遠征を経験したことで英語への愛が深まった。2021年8月にスポーツ専門・オンライン英会話講座(アスリート・イングリッシュ・マイスター)を開始し、首都圏在住の五輪代表選手2名の遠隔英会話指導を行っている。帰国子女・英文科卒・海外の大学(大学院)卒といったバックグランドでは無く、25歳以降ほとんど国内での英語学習により英語力を高めてきた自身の経験、自身の学習法を述べ400名以上のマンツーマンレッスンで検証した指導経験、CELTA(ケンブリッジ大学認定英語教師)教授法などを活かし、口だけでは無く成果の出せる教師を目指している。通訳案内士・TOEIC®990点・英検®1級・IELTS™8.0(スピーキング8.0)
Mokoコーチ
留学経験なしに国内で英語を学習。英語講師/ホテル勤務、地球一周の船旅でボランティア通訳を経験。コーチ歴4年目、現在までに英会話やTOEIC®のコーチングで100名以上のラーナーさんの学習を支援しました。
日本人が英語を嫌いな理由
英語を話せる日本人は相当数いますが、まだまだ少数派で、英語を苦手としている人、英語が嫌いな人が圧倒的に多いのが現状です。
なぜ日本人には英語に苦手意識を持っている人が多いのでしょうか。ここではその理由を2つ挙げます。
- 日本人にとって英語は難しい言語だから
- 学校の授業によって苦手意識がしみつくから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
そもそも日本人にとって英語は難しい言語だから
日本人が英語を「嫌いすぎる」原因として、まず、日本語と英語が非常に「遠い」言語であることが挙げられます。
アメリカ国務省の外交官養成機関であるFSI(Foreign Service Institute)によると、英語ネイティブスピーカーが日本語を習得するのにかかる時間は約2,200時間とされています。
それに対して、スペイン語やフランス語・イタリア語などを習得するのにかかる時間は575〜600時間というランク付けがなされています。
英語話者にとって、日本語は「難しい」言語ということですね。
そうすると、日本人にとっても、英語は難しい言語である可能性が高いです。
英語をなかなか習得できないのは、決して日本人に「問題がある」わけではありません。
日本語話者である以上、英語がなかなか習得できないのは、ある意味「仕方のないこと」なのです。
参考:Foreign Language Training(米国務省)
学校の授業によって苦手意識がしみつくから
日本人が英語を「嫌いすぎる」原因としてもう1つ挙げられるのが、学校英語の影響です。
そもそも学校の英語の授業を通して、英語が嫌いになったという人も多いのではないでしょうか。
特に問題になるのが、文法的誤りを極端に恐れる傾向と、英語をいったん和訳して考えるクセです。
それぞれどんな問題があるのか見ていきましょう。
文法的誤りを極端に恐れる傾向
学校の英語の授業では、文法的誤りを犯すとテストの点数がマイナスになってしまいます。
この積み重ねにより、日本人は「文法的誤り」を犯すことを極端に恐れる傾向があります。
しかし、現在英語話者の8割はノンネイティブスピーカーであり、文法的誤りを犯すのは、基本的に「当たり前」です。
さらに、英語ネイティブですら、英文法を間違えることは少なくありません。
それにもかかわらず、学校英語で文法的誤りを事細かに追求された経験が尾を引いて、大人になっても、英語が必要な場面で「間違えたらどうしよう」「恥ずかしい」と心理的にブレーキがかかってしまう人が多いのではないでしょうか。
英語をいったん和訳して考えるクセ
学校の英語の授業やテストでは、英文を「和訳する」機会も多かったかと思います。
そして、英文を綺麗な日本語に和訳するには、「後ろから訳しなさい」と教わった人も多いでしょう。
しかし、この「後ろから訳す」習慣は、英会話で英語を処理する上で、大きなネックとなります。
例えば、次の例文を見てください。
The man I met on the plane yesterday was a doctor.
昨日飛行機で出会った男性は医者だった。
この文を和訳するには、関係節 [I met on the plane yesterday] を先に訳す必要があります。
しかし、英会話においていちいち「後ろから戻って訳し」ていては、ナチュラルスピードについていくことができず、時間的ロスにつながってしまいますよね。
そしてなにより、「和訳して考える」クセは、英語を英語で考える「英語脳」形成の妨げになります。
逆にいえば、英語を一旦和訳して考えず、英語を英語で考えられるようになれば、英語への苦手意識は一気になくなります。
「英語が嫌いすぎる」ことで生じるデメリット
日本で暮らしていく上で、英語を習得することは必ずしも必要ではありません。
「英語が嫌いだから、一生英語を勉強しないで過ごす」ことに決めても、日常生活に大きな支障はないでしょう。
その一方で、英語を嫌うあまり、英語習得を避けていると、以下のようなデメリットに直面することがあります。
- 仕事の幅が狭くなる
- 年収が低くなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
仕事の幅が狭くなる
英語を全く学習しないでいると、就職できる企業や業種がかなり少なくなるというデメリットがあります。
これまでの日本企業では、外資系企業を除いて、英語力を要件とするケースはあまり多くありませんでした。
しかし、近年のグローバル化に伴い、外資系でない国内企業でも、海外の企業との取引が増えたり、海外に子会社を設置したりと、英語を使う機会は増えてきています。
TOEICを運営するIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)は、「マイナビ・日経2022年卒大学生就職企業人気ランキング」にランクインした人気企業100社に、英語力に関するアンケートを実施しています。
そのアンケートの結果によると、「英語が必要となる業務(部署・職種)はありますか?」という質問に対し、「英語力が必須となる業務がある」と答えた企業の割合は84.8%でした。
また、「新卒採用で英語力を考慮しますか?」という質問に対し、「考慮する」と回答した企業は57.4%、中途採用の場合は73.9%が「英語力を考慮する」という回答でした。
英語が「嫌いすぎる」あまり、英語を習得しないでいると、就職の際、多くのチャンスを逃すことになってしまいそうです。
年収が低くなる
英語を習得しないでいると、英語を使える人との間に明確な年収の差があらわれるというデメリットもあります。
エンワールド・ジャパン株式会社が行ったアンケートによると、英語レベルが「上級」の人の場合、年収1,000万円以上を得ている人は約60%を占める一方、英語レベルが「初級」の場合、年収1,000万円以上の人は10%程度にとどまっています。
また、ダイジョブ・グローバルリクルーティング株式会社による「語学力が年収に与える影響についての調査報告書」では、ネイティブレベルの英語力を持つ人の平均年収は、英語力のない人の平均年収の1.3倍であり、金額に換算すると約130万円の差があるとされています。
ビジネスチャンスをものにし、仕事の報酬・待遇面で豊かな生活を送るためには、英語力は不可欠ともいえるのです。
参考:PR TIMES プレスリリース 2020年2月25日
参考:ダイジョブ・グローバルリクルーティング株式会社「語学力が年収に与える影響についての調査報告書」
英語嫌いを克服するコツ
日本で暮らしていく上で、英語は必ずしも必要ではありませんが、その一方で、高い年収や好待遇を目指すには英語力は大きな武器となります。
英語に苦手意識を持つ人の中にも、英語嫌いを克服したいと考えている方が多いのではないでしょうか。
この章では、まず、英語嫌いを克服するための3つのコツを紹介します。
- 小さな成功体験を積み重ねる
- 楽しめる方法で学習を続ける
- 一人で抱え込まない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
小さな成功体験を積み重ねる
英語学習で最も大切なことは、「続けること」です。そして、学びを続ける大きな原動力となるのは、「成功体験」です。
そうはいっても、苦手な英語学習において、劇的な「成功体験」を迎えるのはなかなか難しいでしょう。
そこでおすすめしたいのが、「小さな成功体験の積み重ね」です。
「何度も聞き直すうちに、聞き取れなかった曲が少し聞き取れるようになった」「上手に発音できなかった単語が、発音できるようになった」など、小さな「進歩」を敏感に感じ取れるようにしてください。
アプリなどを利用して、日々の学習記録をつけるのもよいでしょう。
そして、成功体験を迎えるコツとして、学習目標は低めに設定するのがおすすめです。
「TOEICスコアを100点上げる!」といった目標設定だと、目標達成まで100時間単位の学習時間が必要になってしまいます。
学習は1日5分からでもいいので、まずはその日学習に取り組めた自分をほめてあげましょう。
楽しめる方法で学習を続ける
後の章でも解説しますが、「英語学習」を行うにあたっては、必ずしも机の前に座ってテキストを開く必要はありません。
洋画や海外ドラマが好きな人は、まずは日本語字幕付きで視聴し、内容を把握したのち、じょじょに英語字幕、字幕なし、と難易度を上げていくと、楽しく英語を学ぶことができるでしょう。
海外のアーティストが好きな人は、洋楽を聴くだけでなく、アーティストのSNSやインタビュー動画を閲覧することで、英語に楽しく触れることができます。
まずは英語を「学習する」というより、英語に「興味を持つ」方向からアプローチすると、英語が嫌いな方でも気軽に英語学習を始めることができます。
一人で抱え込まない
英語を学ぶ時、コスト面を考えて、まずは独学から始める方が多いでしょう。
しかし、ひとりで学習を進めていると、英語を学ぶモチベーションが保てず、挫折してしまう危険があります。
オンライン英会話や英語コーチングなど、プロの第三者の力を借りる方法もありますし、SNSなどで英語学習仲間を見つけて交流することで、励ましあいながら英語学習を進めることもできます。
英語交換アプリを利用して、日本語と英語を教えあえる仲間を見つけるのもおすすめです。
英語嫌いな人向けの英語学習法
ここでは、英語嫌いな人向けの英語学習法を紹介します。英語嫌いな人が英語学習を効果的に進めるには、以下の方法が効果的です。
- 英語学習テキストは使わない
- 英語を楽しむ
- ノンネイティブやAIと会話する
- 文法を学ぶなら5文型から
それぞれ詳しく見ていきましょう。
英語学習テキストは使わない
前の章でも触れましたが、英語が嫌いな方は、まず「机に向かって学習参考書を開く」学習は、英語嫌いの方にはあまり向いていません。
洋画・海外ドラマや、洋楽など、好きな英語音声に触れることから始めるのがおすすめです。
そのほかにも、「ハリー・ポッター」や、「となりのトトロ」の英語吹き替え版、日本の漫画の英訳版など、楽しめる方法で英語に触れることから始めましょう。
英語に慣れてきたら、英語学習参考書や、シャドーイングなどの学習法も取り入れていくとよいですが、急いで無理に取り入れる必要はありません。
英語学習法といえば「シャドーイング」が有名ですが、英語嫌いの方が無理をしてシャドーイングから始めてしまうと、むしろ挫折の原因となります。
以下のQ&Aを参考にしてください。
前川 未知雄
前川コーチのご指摘通り、英語学習にはいろいろな道筋があります。
自分に合ったやり方で、まずは英語に興味を持ち、英語に慣れることから始めてみてください。
英語を楽しむ
前項で触れたように、英語学習には様々な道筋があります。
英語「学習」という言葉にとらわれることなく、好きな海外アーティストの楽曲を聴いたり、ハマっている海外ドラマや洋画を観たりして、英語を楽しむことから始めてみてください。
また、英語学習は、自分が好きなこと・興味のある内容を軸に進めると、効果的かつ効率的といわれています。
科学技術に興味のある方は科学関連のニュースを視聴するのもよいですし、美容に興味のある方は美容関連の英語記事を読み進めるのもおすすめです。
英語学習を「面倒なもの」として位置付けるのではなく、毎日の楽しみとしてとらえられるよう工夫するのがおすすめです。
ノンネイティブやAIと英会話する
英語が嫌いな方の中には、ネイティブスピーカーを目の前にすると、緊張して言葉が出なくなってしまう人も多いでしょう。
また、ネイティブスピーカーには、英語講師としての訓練を受けた人材でない限り、「英語が分からない人の気持ちが分からない」人も多いです。
そこで、英語嫌いな方が英会話を始める場合は、自らも英語学習経験を持つノンネイティブスピーカーを相手に選ぶのがおすすめです。
日本人バイリンガル講師と話すのもよいでしょう。以下のQ&Aを参考にしてください。
Mokoコーチ
最近は英会話AIの発達も目覚ましいですよね。AI相手であれば、「間違えたらどうしよう」「恥ずかしい」という思いをせずに、英会話を練習することができます。
おすすめのAI英会話サービスは、アプリ「AI英会話 スピークバディ」です。
感情豊かな「AIバディ」たちと、程よい没入感でリアルな英会話を楽しむことができます。
AI相手なので、間違えることを恐れる必要もないため、英語嫌いの方にぴったりのAI英会話サービスです。
・画像引用:App Store
AI相手に自信をつけたら、実際の英会話に挑戦してみるとよいでしょう。
文法を学ぶなら5文型から
英語嫌いの方で、「英語力が伸び悩んでもう嫌になっている」タイプの方におすすめなのが、「英語5文型」の学び直しです。
英文法というと「現在完了」「仮定法」などの文法事項が思い浮かぶかもしれませんが、すべての英文の基礎にあるのは、英語5文型です。
第1文型(SV)・第2文型(SVC)・第3文型(SVO)・第4文型(SVOO)・第5文型(SVOC)と聞くと、英語嫌いの方はそれだけでアレルギーを感じるかもしれません。
しかしこの5つの文型をマスターすると、英語のほぼすべての文を説明できるようになります。
「英文法を学ぶならまずは5文型から」というキーワードを頭の片隅に留めておいてください。
まとめ
多くの日本人が英語を「嫌いすぎる」のには、相応の理由があります。
それは、日本語と英語が「遠い」言語で、お互いに習得しにくいという問題だったり、学校教育による弊害だったりします。
しかし、英語を習得しないでいると、選択できる仕事の幅は思いのほか狭くなり、仕事上の待遇も悪くなります。
できるなら英語を学ばないで過ごしたいと思う人も多いと思いますが、一方で、英語は豊かな生活を手に入れる上で強力なツールなのです。
「英語嫌いだけれど英語学習を始めたい」と決意した人は、まず好きな映画・ドラマ・音楽など、英語に「興味を持つ」「触れる」ことから始めましょう。
また、一緒に英語を学ぶ仲間や、信頼できる先生を見つけると、英語を学ぶモチベーションを保ちやすくなり、挫折しにくくなります。
そして何より、英語を使いこなせるようになると、コミュニケーションをとれる相手が世界中に広がり、とても楽しいものです。
ぜひ、英語嫌いを克服し、世界へと羽ばたく翼を手に入れてください。
執筆者=なっつるん