英語のブレイクスルーを起こすには何時間勉強するべき?|対策も解説
英語学習のプロの意見 : 2
英語学習に取り組む方の中には、「頑張って英語を勉強しているのに、全然効果が実感できない……」と思っている方も多いのではないでしょうか。
実は、英語を学習している間には、英語が突然理解できたり、急に英語が聞き取れるようになったりする、「ブレイクスルー」という現象が起こります。
この記事では、ブレイクスルーを起こすには何時間英語を学習すればよいか、そしてブレイクスルーの予兆、さらにブレイクスルーを起こすにはどうしたらいいかについて解説します。
英語力がなかなかアップしなくて悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
この記事に登場する英語学習のプロ
Naokoコーチ
大学卒業後、金融機関にて勤務。その後、子どもから社会人まであらゆる英語指導を経験。現在は英語コーチの他、通訳案内士として世界各国からの訪日外国人と接する。コーチングでは、ライティング・スピーキングの他、TOEIC®指導をメインとしており、自身も半年に一回の受験を続けている。
早川幸治(Jay)
ニックネームはJay。SEから英会話講師へ転身。その後、英語セミナー講師として、これまで全国200社以上で研修を担当してきたほか、大学や高校でも教える。高校2年で英検®︎4級不合格から英語学習をスタート。苦手を克服し、TOEIC®︎990点(満点)、英検®︎1級取得。脳や心の仕組みを活用した学習法を提唱し、「上達の本質」を英語学習ほか目標設定やプレゼンなど幅広い研修に応用している。著書に「TOEIC®︎ L&Rテスト 書き込みドリル」シリーズ(桐原書店)、「はじめてでも600点ごえ!TOEIC®︎テスト 全パート完全対策」(永岡書店)、など50冊以上。雑誌連載のほか、企業における学習コンサルティングやコーチング、「英語思考で身につける!日本語プレゼンセミナー」も担当。株式会社ラーニングコネクションズ代表取締役。
英語学習の「ブレイクスルー」とは
「ブレイクスルー」とは、「breakthrough(突破口)」という英単語がもとになった言葉で、もやもや停滞していたものが、突然突破口を得て劇的に進化することをいいます。
英語学習を進めていて、なかなか進歩を実感できない「停滞期」を迎える学習者は多いです。
しかし、それは進歩していないのではなく、コップに水を注いでいるような状態です。
しばらくの間、水はコップの中にとどまり続けますが、ある瞬間、水はあふれだします。
英語学習においても、実は進歩しているのに進歩を実感できない長い時間を経て、ある日突然進歩を実感できる瞬間がやってきます。それが「ブレイクスルー」です。
以下のプロの意見も参考にしてください。
Naokoコーチ
英語力はスーッと右肩上がりに上がっていくのではなく、階段のように、平らに停滞する時と、大きく進歩する時を繰り返して伸びていくということですね。
英語学習を続ければ、ブレイクスルーは必ずやってきます。最も大事なのは、諦めずに学習を続けることなのです。
英語のブレイクスルーはいつやってくる?
英語のブレイクスルーは、ある程度の時間をかけて学習を継続しないと起こりません。
この章では、「ある程度の時間勉強」とは具体的に「どの程度」なのか解説します。
日本人が英語を習得するには何時間かかる?
日本人の大人が英語を習得するのにかかる時間は、1000時間とも2000時間ともいわれています。
この説の根拠となっているのは、おそらく以下のデータです。
アメリカの国務省外交官養成局が発表している「Language Difficulty Ranking」によると、英語話者がフランス語やスペイン語を習得するのにかかる時間は600〜750時間であるのにたいし、日本語を習得するのにかかる時間は2200時間とされています。
英語話者が日本語を習得するのに2200時間かかるからといって、日本人が英語を習得するのに2200時間かかるとは限りませんが、1つの目安と考えることもできます。
そして日本の学校教育で英語を学ぶ時間が約1000時間であるため、学校英語の時間を差し引いて「日本人が英語を習得するのにかかる時間は1000時間」と提唱する説があるのでしょう。
そして、学校英語は学校で習う「科目」の1つであり、「英語学習」に当たらないと考えると、日本人が改めて英語を習得するのにかかる時間は2000時間ということになります。
TOEICで何点取ればブレイクスルーを実感できる?
TOEICを運営するIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)の「PROFICIENCY SCALE」では、TOEICで何点取ればどの程度英語を流ちょうに話せるか、目安が掲載されています。-
- 860点以上 : Non-nativeとして十分なコミュニケーションができる。
- 730点~860点 : どんな状況でも適切にコミュニケーションができる素地を備えている。
- 470点~730点 : 日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。
- 220点~470点 : 通常会話で最低限のコミュニケーションができる。
- 220点以下 : コミュニケーションができるまでに至っていない。
(国際ビジネスコミュニケーション協会の「PROFICIENCY SCALE」をもとにスピークバディが作成)
TOEICスコア470点の人が730点を突破すると、初心者から中級者に移行し、「日常英会話なら問題なくできるな」と実感できるかもしれません。
また、TOEICスコア730点の人が860点以上取れるようになると、中級者から中上級者に移行し、「ほとんど不自由なく英語が話せるようになった」と実感できるようです。
これらのスコアをブレイクスルーの1つの指標とすることもできるでしょう。
英語学習でブレイクスルーはどれくらいの時間で起きる?
オックスフォード出版局は英語教師向けに、TOEICスコアを100点アップさせるには、どれくらいの学習時間が必要か、三枝幸夫氏の論文を引用して、目安としています。
以下はOxford University Pressの「A Teacher's Guide to TOEIC(R). Listening and Reading Test. Preparing Your Students for Success」を引用した参考数値となります。
詳しくは、こちらの参照元をご確認ください。
TOEIC 450点程度の「初心者」の方がTOEIC 650点程度の「中級者」になるには、450時間の学習時間が必要ということになります。
TOEIC 650点程度の「中級者」の方がTOEIC850点程度の「中上級者」になるためには、500時間の学習時間が必要になるといえます。
英語のブレイクスルーに前兆はある?
ここまで、TOEICのスコアを通して、ブレイクスルーを実感するのに必要な英語レベルや勉強時間の目安を解説してきました。
ここでは、TOEICスコア以外のブレイクスルーの前兆を紹介します。
英語の夢を見る
「自分が海外にいて、自分の周りの人が英語で話している夢を見る」というのは、ブレイクスルーを体験した人がよく語る前兆です。
英語で夢を見るのは、日本語を介さずに英語で英語を理解する「英語脳」が出来上がってきている証といえます。
そのため、「英語の夢」とブレイクスルーには相関関係があるといえるでしょう。
スランプに陥る
英語力の向上が実感できなくて、もやもやする時期は長く続くと思うのですが、「急に英語のリスニングができなくなった」「急に英語が話せなくなった」など、激しいスランプを感じることがあるかと思います。
こういった時に英語学習に挫折してしまいそうになりますが、実はこのスランプの原因こそが英語のブレイクスルーであり、スランプはブレイクスルーの前兆なのです。
以下のプロの意見も参考にしてください。
早川幸治(Jay)
増えた知識をスキルに転換するには、タイムラグがあるということですね。
言い換えれば、知識を増やせば、やがてリスニングやスピーキングスキルとして使いこなせる日がやってくるということです。
スピーキングする時の1文が長くなる
ブレイクスルーが起こる前兆の1つとして、英語でスピーキングを行っている時の1文1文が長くなるという現象もあります。
最初は「Yes.」「No.」「Thank you.」くらいしか言えない人も多いでしょう。しかし、じょじょに「I like tennis.」など短い文が自然に口から出るようになります。
中級者以上になれば「I play video games in my free time.」などと言えるようになり、英会話が「楽しい」と思えるようになってくるでしょう。
自分では自覚しづらい前兆現象なので、オンライン英会話などの学習ツールを利用して、自分の発話風景を録音・録画しておくことをおすすめします。
ちなみに、英語学習を始めて間もない時は、あまり自分のビフォーアフターを比べないようにしましょう。あまりに自分の英語がぎこちなくて、むしろ落ち込んでしまうかもしれません。
洋楽や海外映画の音声が自然と聞き取れる
普段から洋楽を聴いたり、英語の映画を観たりする習慣のある人は、ブレイクスルーの前兆として、なんとなく違和感を感じる機会が出てくるかもしれません。
以前は全く分からなかった洋楽の歌詞が、あらためて聞き返すとある程度聞き取れるようになっていたり、日本語字幕がないと分からなかった洋画の内容が、英語字幕付きや字幕なしでも理解できるようになっていたりするのです。
この前兆現象を利用して、英語学習を始めてから2〜3ヶ月おきに洋楽を聞き返したり、洋画を見直したりすることで、学習のモチベーションを維持することができます。
前後であまり変化を感じられないこともあるかもしれませんが、自分の進歩を「見える化」する1つの指標として、自分の現状を記録しておくのもよいでしょう。
英語のブレイクスルーがなかなか起きない原因とは?
ここまで、英語のブレイクスルーを起こすのに必要な学習時間や、ブレイクスルーの前兆現象について解説しました。
ただ、学習を続けていてもなかなか効果を実感できない場合や、前兆現象が起こらない場合は、それには以下のような原因が隠れていることが考えられます。
- 語彙力が足りていないから
- 文法力が足りていないから
- 英単語の発音が理解できていないから
- 即座に話すための自動化ができていないから
そして、そもそも英語の上達を実感するには時間がかかります。まずは、なぜ英語学習が右肩上がりに進まないのか解説します。
そもそも英語の上達には時間がかかる
そもそも英語学習では、学習成果がすぐに英語のスキルとして反映されるものではありません。
第二言語習得論では、言語の上達は「U字型発達曲線(U-shaped learning curve)」を描くとされています。
英語学習を始めたばかりの頃は、どんどん英語の知識が増えていくのを実感できます。
しかし、学習段階が半ばになると、上達を実感できないどころか、むしろ自分の能力が衰えているような感覚に陥ります。
その「学んだ知識をうまく使えない」時期を過ぎると、ようやくブレイクスルーを迎えることができます。
なぜこのようなことが起こるかというと、新しい事柄を学ぶことで、それまで構築した言語システムに乱れが生じてしまうからです。
そうすると一時的に英語が出てこなくなったり、ミスが増えたりしますが、これは言語能力が衰えているのではなく、言語能力がアップするために必要なプロセスなのです。
ただ、英語学習を進めていてもなかなかブレイクスルーが起きない場合、何らかの原因が隠れていることも考えられます。
次の項からは、ブレイクスルーが起きない原因をケース別にみていきます。
ブレイクスルーが起きない原因①:語彙力が足りていない
ブレイクスルーがなかなか起きない、前兆現象も起きないという方は、語彙力が足りていないのかもしれません。
「語彙力を増やす」というのは、単語とその意味をひたすら暗記するだけの作業ではありません。
2つ以上の単語が組み合わされた「英熟語」も覚える必要がありますし、「コロケーション(一緒に使われる事が多い単語の組み合わせ)」も覚えていく必要があります。
ブレイクスルーが起きない原因②:文法力が足りていない
英語の文法知識というと、「現在完了」「仮定法」などの文法項目が真っ先に思い浮かぶでしょう。
ただ、英文法の知識として見落とされがちなのが、英語の5文型です。
第1文型はSV(主語+動詞)、第2文型はSVC、第3文型はSVO、第4文型はSVOO、第5文型はSVOCと習いましたよね。
これらの文の構造は英語の文を組み立てる上で大きな柱となります。
文法項目に加えて、5文型についてもしっかり把握し、使えるようになっているかどうかチェックしてみてください。
ブレイクスルーが起きない原因③:英語の発音について理解できていない
日本語の音の数は約22個といわれているのに対し、英語には約44個もの音があります。
そのため、英語をカタカナでとらえていては、英語学習を進めてもブレイクスルーを迎えるのは難しいでしょう。
日本語と英語では音のとらえ方も違いますし、英語にはリンキングやリダクションなど独自の発音ルールもあります。
英語の音や発音ルールについてあまり知らなかったという方は、英語の発音についての理解を深めることで、ブレイクスルーを迎えることができるかもしれません。
ブレイクスルーが起きない原因④:自動化ができていない
単語・文法知識は十分にあるのに、なぜか英会話がうまくいかないという方は、覚えた知識が「使える」状態に「自動化」されていないのかもしれません。
英文を聞いた時に、一度和訳して考えるクセのある人は、「英語脳」が形成されていない可能性があります。
英会話をスムーズに進めるには、英語を英語で理解し、言いたいことを英語で組み立てる「英語脳」を手に入れる必要があるのです。
ブレイクスルーが起きない原因は「AIカウンセラーの英語相談」で
ここまで、ブレイクスルーが起きない原因をケース別にみていきましたが、自分の悩みを正確に把握するのはなかなか難しいですよね。
そこでおすすめなのが、「AIカウンセラーの英語相談」というサービスです。
いくつかの質問に答えると、AIカウンセラーが過去の学習経験を深掘りし、1,000件以上のプロのお悩み相談データをもとにあなたの悩みを言語化してくれます。
英語のブレイクスルーがなかなか起きなくて、自分の悩みをより深く知りたいという方は、AIカウンセラーの英語相談を試してみてはいかがでしょうか。
英語のブレイクスルーを起こすには何をしたらいいか
ここまで、英語のブレイクスルーを体験するにはどれくらいの時間勉強したらよいか、そしてブレイクスルーの前兆について紹介しました。
この章では、どうしたら英語学習でブレイクスルーを起こせるのか、その方法を解説します。
学習目標をはっきりさせる
英語学習のブレイクスルーを体験するには、長い停滞期にめげずに学習を続けることが大事です。
そして学習を継続するには、「軸」となる目標を持つのが効果的です。
英語力の向上が実感できないことに愕然としてしまい、「何でこんなに頑張って英語を勉強してるんだっけ……?」と疑問を感じた時に、「そういえば」と立ち返ることができるような目標を立てましょう。
例えば、「週末の英語ミーティングで言いたいことがあるのに言えないのをなんとかしたいからだった」とか、「海外で服を買う時に色とサイズをちゃんと指定できるようになりたいんだった」といった目標です。
「目指したい理想の自分」をイメージし続けることで、理想の自分と実際の自分が重ね合わさる日がやってきます。
学習を習慣化させる
前の項で述べたように、英語学習のブレイクスルーを体験するには、英語学習を継続する必要があります。
毎日英語に触れる時間を設けたいので、無理のない時間で無理なく続けるのが理想的です。
最初は毎日5分からでもいいので、例えば英語学習アプリを使っているなら、まずアプリを開く習慣を身につけましょう。
「学習」といっても必ずしも机に向かってテキストを開く必要はありません。海外の人が集まるバーに立ち寄ってみたり、洋楽を聴いたり、洋画を観たりと、「何でもいいから英語に触れる時間」を設けるのも1つの方法です。
途中で息切れしないように、楽しんで英語が学べるよう工夫しましょう。
弱点にフォーカスした学習法を選ぶ
前の章でブレイクスルーを実感するために必要な英語学習時間について解説しましたが、自分の弱点を集中的に攻略すれば、より効率的に英語を習得することができます。
語彙力や文法力が足りないケースもそれぞれあるでしょうし、英語の発音の理解が十分できていない可能性もあります。
語彙力や文法力が充分にあっても、覚えた知識が自動化されておらず、「英語脳」が出来上がっていないために、英会話をスムーズに進められないケースもあるかと思います。
自分の弱点を明らかにした上で、弱点にフォーカスした英語学習を行えば、より早く、より確実に英語のブレイクスルーを迎えることができるでしょう。
まとめ
英語のブレイクスルーを実感するには、500時間程度学習を続けることが必要であるということを解説しました。
そして学習の途中には、停滞期やスランプを経験することもあります。できれば、つらい時期はなるべく早く乗り越えたいですよね。
停滞期を乗り越えて、効率よくブレイクスルーを目指すには、個人個人の弱点にフォーカスして学習を進めるのが効果的です。
でも、自分で自分の悩みを正確に把握はなかなか難しいもの。
そこでおすすめなのが、「AIカウンセラーの英語相談」です。
「AIカウンセラーの英語相談」では、いくつかのアンケートと簡単な英語問題に答えるだけで、AIが過去の学習状況と現在の悩みを深掘りします。
1,000件以上のプロによるお悩み相談のデータから、第二言語習得論に基づいて弱点を導き出してくれます。
今まで英語学習を頑張ってきたけれど、なかなかブレイクスルーを実感できないという人は、自分の悩みを明らかにするところから始めてはいかがでしょうか。
執筆者=なっつるん